身体はわからない
 
 

臨床に入った最初の頃、悩んでいた事が合った。
実際の検査の結果が、症状に対応しない事があるのである。
又、治療もこうしたら、ああなるはずなのに、ああならずに、こうなる時がある。

このように知識と実際が合わない事が続くと、治療がつらくなる。
そのような悩みを、カイロ界のブラックジャックといわれるI先生に相談した事がある。
I先生は「身体はよくわからんもんだ。わからんからおもしろいんだ。」
と一言教えてくれた。
これで、目が覚めた。治療がおもしろくなった。

机上の事と、実際が合わない事はよくある事だ。しかし、沢山勉強して、知識の内容が多くなると、それが実際のような気がしてきてしまう。
身体を理屈で完全に理解しようとしても無理である。はっきりいってしまう。無理である。
何故なら、
「頭より、身体は広く、身体より世界は広い」からである。
自分より大きなものは、完全には把握できない。
お茶わんにスイカ一個は入らない。

身体を細かく分解して、それを個別に理解する。現代医学がやっているのはまさにこれである。
行き着いたのは遺伝子である。
ヒトの遺伝子は近い将来、解明されるであろう。

では、それでヒトを完全に理解できるのであろうか?
遺伝子は、複雑な生命系の一部をなしているにすぎない。今度はそれを身体全体に置き換える必要がある。
これは、1分の1の地図を、百万分の1の地図に当てはめるような行為である。
とてつもない大きさになる。人間の脳のおちゃわんには入りきらない。

だから、現代の病院は、○×科というように細分化していくのであろう。
でも、これでは誰が身体全体を見てくれるのだろうか?
最近、医師の診断能力が低下したという言葉を良く聞くが、このように身体を細分化して、診断するのが一つの原因だろう。

しかし、我々カイロプラクティックは、身体を一つとして治療するのが大切な治療法である。「背骨は背骨、他は別な所で」とは言わない。

では、どうしたらよいか?
適度な縮図の知識を持つ。ヒトの頭に入る程度の。
後は、その個人の身体に従えばいいのである。こうして、ああなったんだったら、ああすればいいのである。
もちろん、知識は大事。でも知識より身体が広い事は忘れてはいけない。

「頭より、身体は広く、身体より世界は広い」
いい言葉だなぁ。これ。


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